AI時代の運営成熟度モデル(AI Operations Maturity Model、以下 AI OMM)は、AIを前提に、組織の成果を「誰が担当したか」から「仕組みが回り続けるか」へ移すための4段階モデルです。自社がいまどの段階にいるかが分かれば、次に打つべき一手が決まります。diverを運営する株式会社Merが、自社調査3本と公的統計をもとに設計しました。
なぜ「どこまで進んだか」で測らないのか
成熟度を進捗で測ると、必ず自己申告になります。当社の調査では、67.6%の企業が「業務プロセスは文書化・標準化されている」と自己評価する一方、AI導入の壁の1位は「業務プロセスが整理されておらず、AIを組み込む前提が整っていない」(45.2%)でした(Japan AIOps Report 2026 Winter、n=537)。同じ組織の中で評価が割れる以上、進捗を軸にはできません。
そこでAI OMMは、軸を「その組織の成果を再現しているものは何か」に置きます。これは自己申告できません。人が辞めたとき、担当が変わったとき、入力の督促をやめたときに、事実として現れるからです。
4つのStage
成果を決めているもの | ルールの所在 | データの発生 | 担当が変わると | |
|---|---|---|---|---|
Stage 1(人) | 誰が担当したか | 個人の頭の中 | 事後に手で記録 | 成果がリセットされる |
Stage 2(型) | 手順書と教育 | マニュアル・人が読む文書 | 手入力と督促で維持 | 成果は再現、品質は教育依存 |
Stage 3(仕組み) | システムに実装されたルール | CRM・ワークフロー・API | 業務の副産物として自動発生 | 成果も品質も維持 |
Stage 4(自律) | 仕組み自身の改善速度 | システムとAI | 自動発生し、自動で整備され続ける | 影響が測定できないほど小さい |
Stage 3には、世界で使われている呼び名があります。Revenue Operations(RevOps)です。Stage 4はRevenue EngineeringやGTM Engineeringと呼ばれます。一方、日本で流通しているのは営業標準化やThe ModelといったStage 2(型)の語彙までです。名前のない機能は、組織図にも予算にも載りません。この語彙を輸入することも、AI OMMの目的の1つです。
日本の現在地: 独立した7指標が、約2割に収束する
生成AIを1つ以上の業務で利用している企業は、日本で86.4%に達し、米国(90.9%)との差は4.5ptまで縮まりました(総務省 令和8年版情報通信白書、2026年7月)。「導入が遅れている」は、もう起きていません。入っているのに成果にならない。これがAI OMMの問題設定です。
では、仕組みの側(Stage 3以上)に到達している企業はどれだけあるか。当社の3つの調査を横断すると、データ基盤の全社統合25.1%、RevOps導入済み23.9%、AIの業務プロセス組込20.3%、仕組み化への重点投資17.8%など、独立した7つの指標がいずれも約2割(17.8〜25.1%)に収束します。調査も設問も異なるのに、同じ帯に落ちます。
総務省の同じ白書でも、「全社横断的に事業変革やイノベーションに取り組んでいる」企業は日本21.5%と、この帯の真ん中に落ちています(米国は35.6%。「組織的な取り組みはない」は日本27.0%に対し米国1.4%)。調査主体も母集団も違う数字が同じ構造を示しており、約8割の企業がStage 2(型)以前に滞留していると読めます。
現在地は「事実の質問」で判別する
Stageの判定には、意見ではなく事実で答えられる質問を使います。
Stage 1と2の境界: 同じ案件を別の担当が引き継いだとき、進め方は再現されましたか。
Stage 2と3の境界(最重要): 入力の督促をやめたら、CRMやSFAのデータは維持されますか。
Stage 3と4の境界: 人が起動しなくても改善が回り続けていますか。自動化が止まったとき、人が気づく前にシステムが検知しますか。
督促をやめたらデータが崩れるなら、ルールはまだ人の側にあり、Stage 2です。手順書やガイドラインが整っているほどStage 3と誤認しやすいため、この質問で確かめる価値があります。なお、Stageは評価ではなく現在地です。Stage 2は日本企業の最大滞留層であり、遅れではなく多数派です。
移行の落とし穴3つ
Stageを上げようとする組織は、繰り返し同じ場所で足を取られます。いずれも意欲ではなく、順序と認識の問題です。
飛び級 — 仕組みの前にAIを載せる。 AI活用が特定業務でのツール使用(33.0%)や個人利用(27.2%)にとどまる企業は60.2%あります(Japan AIOps Report 2026 Winter)。業務プロセスの中でAIが自動的に起動している企業も29.3%にとどまり、67.1%は人が起動しています(Japan AI Operations Report 2026 Summer、n=548)。ルールがシステム側にないままAIを入れても、人が呼び出す道具が1つ増えるだけです。
語彙の不在 — 名前のない機能は設計されない。 日本の分業実施率はマーケティング58.2%、フィールドセールス53.3%に対し、部門を横断して収益プロセス全体を設計するRevOpsは17.7%です(Japan RevOps Report 2025 Summer、n=510)。分業の概念はあるのに、統合する機能だけが欠けています。
採用に逃げる — 人を採れば解決すると考える。 RevOps導入の課題1位は「適切な人材・スキルの確保が難しい」(56.6%、同上)。参考までに米国では、SFA導入企業の93.6%がセールスオペレーションの専門チームを設置しています(当社 日米比較レポート2024、米国企業n=79への単独設問)。必要なのは希少人材の獲得ではなく、機能の設置です。機能は内製でも外部チームでも成立します。
Stageを上がるのに必要な三層
Stageを上がるには、3つの機能が要ります。データと記録が1か所に集まる場所(BASE)、業務を設計して回し続けるチーム(STRUCTURE)、データが判断に使える状態を保つ機能(DATA)です。Stage 2への到達はBASEだけで届きますが、Stage 3には三層すべてが要ります。
三層は「必要な機能」であって、特定の製品ではありません。BASEはSalesforceでもHubSpotでも、STRUCTUREは内製チームでも成立します。diverはこのうちSTRUCTURE層を、自社で採用・育成せずに外部チームとして持てる形で提供しています。運営構造の具体的な設計方法はAIエージェントとRevOpsで扱っています。
よくある質問
ほかのAI成熟度モデルと何が違いますか?
多くのAI成熟度モデルは、技術の導入度やガバナンス体制の整備度を軸にしています。AI OMMの軸は「組織の成果を再現しているものは何か」という運営構造で、AIそのものではなく、AIが働ける土台の段階を測ります。判定に自己評価を使わず、事実の質問で判別する点も設計上の違いです。
自社のStageを手早く確かめる方法はありますか?
「入力の督促をやめたら、データは維持されるか」を確かめてください。督促や定例の入力確認で品質を保っているなら、ルールはまだ人の側にあり、Stage 2(型)です。
Stage 2と判定されたら、何から始めるべきですか?
研修やガイドラインの追加ではなく、1本の業務フローを選んで、手順書の中のルールをCRMやワークフローとしてシステム側に実装することです。進め方はAI活用を組織に定着させる方法で具体的に扱っています。
次に確認すること
まず境界の質問で、自社の現在地を確かめてください。Stage 2からStage 3への移行は、希少人材の採用ではなく機能の設置で進みます。diverは社外RevOpsチームとして、業務フローの設計からシステムへの実装、定着までを一気通貫で担っています。自社の現在地の判定から始めたい場合は、diverへ相談するからどうぞ。
参照元
総務省「令和8年版情報通信白書」2026年7月
Japan AIOps Report 2026 Winter(株式会社Mer、n=537)
Japan AI Operations Report 2026 Summer(株式会社Mer、n=548)
Japan RevOps Report 2025 Summer(株式会社Mer、n=510)
日米比較レポート2024 SFA定着実態調査(株式会社Mer)
記事情報
著者: diver編集部
レビュー: diverチーム
更新日: 2026年9月1日