iPaaS(Integration Platform as a Service、アイパース)とは、複数のSaaSやシステムをクラウド上で接続し、データ連携と業務プロセスの自動化を一元管理するサービスです。従来は「バラバラなSaaSをつなぐ道具」として説明されてきましたが、生成AIの業務活用が進んだ今、役割が変わりつつあります。基本の定義とRPAとの違い、AIを業務フローの中で動かす基盤——制御平面——としての役割、そして製品を選ぶときに実際に分かれる3つの分岐を順に扱います。選定で最初に効くのは製品の優劣ではなく、つなぐ先が国内サービスか、課金単位が自社の処理の形と合うか、保守するのが誰かの3点です。
iPaaSができること
iPaaSは、業務の流れを「きっかけ→条件分岐→データの変換→書き込み→通知」のフローとして組み、自動で回します。
たとえば「Webフォームに問い合わせが入る」をきっかけに、「既存顧客かを判定して分岐し」「会社名の表記を整えてCRMに登録し」「担当者にチャットで通知する」という一連の流れを、プログラミングなしの画面操作で組めます。代表的な製品にZapier、Make、Workato、n8nなどがあります(本記事では個別製品の比較は扱いません)。
各SaaSが持つ1対1のネイティブ連携と違い、iPaaSは複数のシステムをまたぐフローを1か所で管理できます。連携が増えるほど、どこで何が動いているかを一元的に見られる価値が大きくなります。
RPA・API直接連携との違い
自動化の道具は他にもあります。違いは「何を操作するか」です。
操作する対象 | 得意な場面 | 弱点 | |
|---|---|---|---|
iPaaS | システムのAPI | SaaS間のデータ連携・フロー自動化 | APIがない社内システムには届かない |
RPA | 画面(人の操作を模倣) | APIのないレガシーシステムの操作 | 画面変更で止まる。実行が遅い |
API直接連携(個別開発) | システムのAPI | 要件が固定された大量処理 | 開発・保守がエンジニア依存になる |
RPAは画面の見た目に依存するため、画面デザインの変更で止まります。iPaaSはAPIで内部的にデータをやりとりするため、画面変更の影響を受けにくく、処理も高速です。APIのある業務系SaaS同士の連携なら、iPaaSが第一候補になります。
なぜ今iPaaSか——AIを業務で動かす「制御平面」
生成AIの導入が進んでも、AIが業務プロセスの中で自動的に起動している企業は29.3%にとどまり、67.1%は人が手作業で起動しています。AIの出力側も同じで、成果物を手作業で作成している企業が46.2%、AIの出力を手作業でコピー・転記している企業が21.2%あります(Japan AI Operations Report 2026 Summer、n=548)。
AIに賢さが足りないから、ではありません。AIには業務データを読む場所と、結果を書き込む場所が与えられていないからです。人がプロンプトを打ち、出力をコピーして貼り付けている限り、AIは「人が呼び出す道具」のままです。
この「読む場所・書く場所・動くきっかけ」を与えるのがiPaaSです。役割分担は次のように固定できます。
担い手 | 担う役割 |
|---|---|
AI | 意味の理解、文章の生成 |
iPaaS | 起動、分岐、データ整形、通知、再実行、ログ、権限 |
人 | 判断、承認、例外対応、改善 |
AIが賢い頭脳だとすれば、iPaaSは神経と手足です。当社では、開拓営業の業務を6つの工程に分解し、この役割分担で自動化した結果、アポイント獲得数が約2倍、営業準備の工数が約7割減になりました(導入前後3ヶ月間の社内比較)。成果を出したのはAI単体ではなく、AIが働ける流れを作った設計の側です。
もう1つ、iPaaSが承認・権限・ログをフローに埋め込めることは、統制の基盤にもなります。未承認AI利用(シャドーAI)への対策としての意味はシャドーAIとはで扱っています。
MCPとの関係——接続の規格と、運用の制御平面
AIとツールの接続では、MCP(Model Context Protocol)というオープン標準の採用が広がっています。MCPは、AIアプリケーションを外部のデータソースやツールにつなぐための共通規格です。対応するツール同士なら、個別の開発なしにAIから読み書きできるようになります。
「MCPで接続できるなら、iPaaSは要らないのでは」という疑問が出ますが、両者は担う層が違います。MCPが標準化するのは接続そのもの、つまりAIがどのツールを読み書きできるかです。一方、いつ起動するか、どの条件で分岐するか、誰が承認するか、失敗したらどう再実行するかという業務フローの運用は、接続規格の外側にあります。iPaaSが担うのはこの運用の層です。AIが自分でツールに触れられるようになるほど、承認・ログ・権限といったフロー側の統制の重要性はむしろ上がります。
また、MakeのAI Agentsのように、iPaaS自体がAIエージェント機能を内蔵する動きも始まっています。接続はMCP、判断と生成はAI、フローの制御はiPaaSという役割分担で捉えると、位置づけを見失いません。
iPaaS選びで最初に決める3つ
製品の一覧を見比べても選定は進みません。どの製品も「多数のSaaSにつながる」「ノーコードで組める」と書いてあり、その説明では差が出ないからです。実務で分かれるのは次の3点です。
つなぐ先が国内サービスかどうか
海外製のiPaaSは海外SaaSのコネクタが厚く、国内サービスは製品ごとに扱いが大きく違います。しかも差は「対応しているか」ではなく「トリガーがあるか」に出ます。このあとの2つの節で実際の数を示します。
課金単位が自社の処理の形と合うかどうか
課金の数え方は製品ごとに定義が違います。実行の回数を数える製品と、実行の中で動いた処理の数を数える製品があるためです。
同じ業務でも消費量は大きく変わります。20の処理からなるフローを月1,000回動かすと、実行の回数で数えれば1,000、処理の数で数えれば最大20,000です。逆に3つの処理のフローを50本、それぞれ月100回動かすと、前者は5,000、後者は最大15,000になります。
フローの本数ではなく、1回の実行で動く処理の数から見積もってください。各製品の公式表記と計算の内訳はn8nとはに、Makeのクレジットの数え方と見積もりの立て方はMakeによるノーコード自動化に、Zapierのタスクが計上される条件と上限に達したときの挙動はZapierとSlackの連携にあります。
保守するのが誰か
作った後に誰が直すかで選ぶ製品が変わります。ユーザーレビューでは、エンジニアに依存せず自分たちで連携を保守できる点を評価する声が挙がっています。一方でセルフホストできる製品を選ぶと実行回数の制限からは自由になりますが、サーバーの運用と更新を自分たちで持つことになります。
管理画面と公式資料の言語も、保守できるかどうかに直結します。レビューには管理画面が英語のみだった、日本語の公式資料が無いという指摘があります。ニッチな連携先ほど資料が薄くなるため、つなぐ先が決まっているなら契約前にその連携先の資料を読んでください。
iPaaSには2つの系統がある
iPaaSと呼ばれる製品は、出自の違う2つの系統に分かれます。各社が自分をどう呼んでいるかを見ると、境目がはっきりします。
系統 | つなぐ対象 | 例と公式の自称 |
|---|---|---|
SaaS同士をつなぐ自動化型 | SaaSで起きたイベント | Zapier、Make、n8n。課金単位はタスク、クレジット、ワークフローの実行回数で、いずれも起きたことの数を数える |
基幹システムとデータをつなぐ連携基盤型 | ファイル、データベース、基幹システム | HULFT Squareは「データ連携(サービス型)」に置かれ「オンプレミス、クラウドなどあらゆるシステムに散在するデータをつなぐiPaaS」と説明される。DataSpider Servistaは「データ連携(オンプレミス型)」。ASTERIA Warpは「データ連携基盤」を掲げ「EAI/ESB国内シェアNo.1」と表記し、クラウド版を「iPaaS版」と呼ぶ |
この違いは選定に直接効きます。国内ベンダーの製品は後者の系譜から来ており、SaaSコネクタの品揃えを競っているわけではありません。つなぎたいものが会計システムや受発注のファイルなら連携基盤型、SaaSの通知やレコード作成を起点にしたいなら自動化型です。
「国内サービスをつなぎたい」という要件は、だから製品の優劣ではなく系統の選択になります。
つなぐ先が国内サービスのとき
海外製のiPaaSで国内サービスをつなげるかは、コネクタの有無では判断できません。書き込みだけができる状態と、そこで起きたことを起点にできる状態は別物です。
公式のアプリ一覧で数えると、同じサービスでも製品ごとに次の差があります(2026-09-07取得)。
つなぎたい先 | Make | Zapier |
|---|---|---|
Chatwork | 22モジュール(トリガー1・アクション13・検索8) | 3アクション(Create Room、Send Message、Create Task)。トリガーの掲載なし |
kintone | 12モジュール(トリガー1・アクション9・検索2)。「Kintone (Legacy)」名義 | 1トリガー(New Record)と5アクション |
Chatworkの行が選定を左右します。Zapierの公式一覧にトリガーが無いため、Chatworkへ通知を送る自動化は組めますが、Chatworkで起きた発言をきっかけに動かす自動化は組めません。問い合わせがChatworkで来る業務は、この1点で製品が決まります。
kintoneは両製品にトリガーがあり、レコードの作成を起点にできます。ただしMake側は「Kintone (Legacy)」という名義で提供されているため、長期に使うなら後継の扱いを契約前に確認してください。
LINEについては、Makeが17モジュール(トリガー1・アクション14・検索2)を公開しています。Zapier側は公式のアプリ一覧で該当ページを確認できなかったため、ここでは比較しません。
確認のしかた
契約前に、つなぎたいサービスの公式アプリページを開いて、トリガーが載っているかだけを見てください。アクションの数は多くても、トリガーが無ければ自動化の起点にはできません。
ユーザーレビューでも、国内サービスの対応の厚さで製品を選び分けている声、国内アプリが非対応で別途iPaaSを契約することになった例、国内連携の少なさと日本語資料の不在を挙げる声が、それぞれ独立に出ています。1製品に絞らず、業務の単位で使い分ける形も実務では取られています。併用したときの運用の分け方はMakeによるノーコード自動化にあります。
つなぐ先がスプレッドシートで足りるかどうかから決めたい場合はスプレッドシートをデータベースとして使うを先に読んでください。
導入を考える順番
iPaaSはツール選定から入ると失敗します。つなぐ対象の業務が整理されていないと、動くフローが作れないからです。順番は次のとおりです。
業務フローを棚卸しする
AI・iPaaSがある前提で業務フローを再設計する
ツールとデータの状態を整える
入出力先と承認ルールを定義する
iPaaSで制御平面を作る
小さく運用し、標準化して横展開する
iPaaSの出番は5番目です。1〜4を飛ばしてツールを契約しても、自動化する対象が決まりません。再設計の具体的な進め方はAIエージェントとRevOpsで扱っています。
誰が進めるか——社内で回すか、外部のRevOpsチームに任せるか
分かれ目は、社内に業務フローを再設計できる人がいるかどうか、そしてその人が実装から運用定着まで数か月にわたり時間を割けるかどうかです。人がいても通常業務との兼務で時間が取れない場合、iPaaSは設定だけ終わって現場で使われなくなります。
社内で回す場合、担当者は業務の棚卸しからフロー設計、実装、現場への展開、運用後の調整までを一人か少人数で担います。通常業務との兼務で時間が足りないと、導入の速さが優先されやすく、現場の実態と合わない設定のまま公開されることがあります。
外部のRevOpsチームに任せる場合、業務フローの再設計・iPaaSでの実装・運用定着までを一括して引き受けます。社内側は業務知識の提供と設計判断への参加に専念でき、通常業務を圧迫されません。diverは、業務フローの再設計からiPaaSでの実装、運用定着までを一気通貫で担う社外RevOpsチームです。
短期賃貸を手がけるHmlet Japanは、diverに業務フローの再設計から実装・定着までを任せました。導入から3年間で、営業担当者1人当たりの月間案件数は約50件から約120件に増え、約2.4倍になっています。Hmlet Japanの数値は公開事例に基づく個別の成果で、成果は業務・体制・導入範囲により異なります。
人か時間のどちらかが欠けているなら、外部のRevOpsチームに任せることで、業務フローの再設計から運用定着までを代わりに進められます。両方そろっているなら、社内で進めて構いません。
iPaaSが要らないケース
連携したいシステムが2つだけで、今後も増える見込みがなく、SaaS標準のネイティブ連携で要件が足りるなら、iPaaSは不要です。フォームの回答をスプレッドシートに集めるだけなら標準機能で完結します(Googleフォームとスプレッドシートの連携)。また、ミリ秒単位の応答が必要な基幹処理や、大量データの常時同期は、個別のAPI開発やETLツールの領分です。iPaaSの価値は、連携先が3つ以上に増え、分岐や整形を伴うフローを非エンジニアの手で作り変え続けたいときに出ます。
よくある質問
iPaaSは何と読みますか?
「アイパース」と読みます。Integration Platform as a Serviceの略です。
RPAとiPaaSはどちらを選ぶべきですか?
つなぎたいシステムにAPIがあるかで決まります。APIがあるSaaS同士ならiPaaS、APIのないレガシーシステムの画面操作を自動化したいならRPAです。両方が混在する業務では、併用も選択肢になります。
MCPとiPaaSはどう違いますか?
MCP(Model Context Protocol)はAIアプリケーションと外部ツール・データをつなぐ接続の標準規格で、iPaaSは業務フロー全体を組んで動かす制御平面です。MCPで接続したAIをいつ動かし、誰が承認し、どう記録するかはフロー側の設計であり、両者は競合ではなく補完の関係にあります。
料金はどう決まりますか?
多くの製品が、フローの実行回数または処理タスク数に応じた月額課金です。無料枠を持つ製品も多いため、1本のフローで小さく検証してから広げる進め方が取れます(各製品の現行料金は公式サイトで確認してください)。見積もりはフローの本数ではなく、1回の実行で動く処理の数から立ててください。製品ごとの数え方の違いはn8nとはで比較しています。
IaaSとiPaaSは何が違いますか?
IaaSはサーバーやネットワークそのものをクラウドで借りるサービス、iPaaSはすでにあるシステムやSaaSをつないで業務フローを動かすサービスです。IaaSはシステムを載せる場所、iPaaSはシステムの間をつなぐ層にあたり、比較して選ぶ関係にはありません。
iPaaSとAPI連携の違いは何ですか?
どちらもAPIを使ってデータをやりとりします。違いは作り方と保守の担い手です。API直接連携は要件を固定して個別に開発するため大量処理に向く一方、変更のたびにエンジニアの手が必要になります。iPaaSは画面操作でフローを組み替えられるため、分岐や整形を含む流れを非エンジニアが直し続けられます。
国内のSaaSはつなげますか?
製品によって差が大きく、「対応しているか」ではなく「トリガーがあるか」で分かれます。たとえばChatworkの場合、Makeは公式一覧にトリガーを含む22モジュールを持ちますが、Zapierは3つのアクションのみでトリガーの掲載がありません(2026-09-07取得)。書き込みはできても、そこで起きたことを起点にできない状態です。契約前に、つなぎたいサービスの公式アプリページでトリガーの有無を確認してください。
iPaaS導入は社内で進めるべきですか、外部のRevOpsチームに任せるべきですか
社内に業務フローを再設計できる人がいて、実装から定着まで数か月時間を割けるなら、社内で進められます。人か時間が足りない場合は、diverへ相談することで、業務フローの再設計から運用定着までを任せられます。
次に確認すること
自社の業務で、人がAIを起動してコピー・転記している場面がどれだけあるかを数えてください。その数が、iPaaSで自動化できる候補の数です。diverは社外RevOpsチームとして、業務フローの再設計からiPaaSでの実装、運用定着までを一気通貫で担っています。自社の業務での組み方から相談したい場合は、diverへ相談するからどうぞ。
参照元
Japan AI Operations Report 2026 Summer(株式会社Mer、n=548、調査期間2026-06-24〜25、従業員100名以上の生成AI活用企業の責任者・担当者対象)
Model Context Protocol 公式サイト(modelcontextprotocol.io、2026-09-01確認)
Make「AI Agents」公式ページ(make.com/en/ai-agents、2026-09-01確認)
Make「Chatwork」公式インテグレーションページ(make.com/en/integrations/chatwork、2026-09-07取得)
Make「kintone」公式インテグレーションページ(make.com/en/integrations/kintone、2026-09-07取得)
Make「LINE」公式インテグレーションページ(make.com/en/integrations/line、2026-09-07取得)
Zapier「Chatwork」「kintone」公式アプリページ(zapier.com/apps/chatwork/integrations、zapier.com/apps/kintone/integrations、2026-09-07取得)
株式会社セゾンテクノロジー 製品一覧(saison-technology.com/service/product/、2026-09-07取得)、アステリア「ASTERIA Warp」公式サイト(asteria.com/jp/warp/、2026-09-07取得)
記事情報
著者: diver編集部
レビュー: diverチーム
更新日: 2026年9月7日