iPaaS(Integration Platform as a Service、アイパース)とは、複数のSaaSやシステムをクラウド上で接続し、データ連携と業務プロセスの自動化を一元管理するサービスです。従来は「バラバラなSaaSをつなぐ道具」として説明されてきましたが、生成AIの業務活用が進んだ今、役割が変わりつつあります。この記事では、基本の定義とRPAとの違いに加えて、AIを業務フローの中で動かす基盤——制御平面——としてのiPaaSを解説します。
iPaaSができること
iPaaSは、業務の流れを「きっかけ→条件分岐→データの変換→書き込み→通知」のフローとして組み、自動で回します。
たとえば「Webフォームに問い合わせが入る」をきっかけに、「既存顧客かを判定して分岐し」「会社名の表記を整えてCRMに登録し」「担当者にチャットで通知する」という一連の流れを、プログラミングなしの画面操作で組めます。代表的な製品にZapier、Make、Workato、n8nなどがあります(本記事では個別製品の比較は扱いません)。
各SaaSが持つ1対1のネイティブ連携と違い、iPaaSは複数のシステムをまたぐフローを1か所で管理できます。連携が増えるほど、どこで何が動いているかを一元的に見られる価値が大きくなります。
RPA・API直接連携との違い
自動化の道具は他にもあります。違いは「何を操作するか」です。
操作する対象 | 得意な場面 | 弱点 | |
|---|---|---|---|
iPaaS | システムのAPI | SaaS間のデータ連携・フロー自動化 | APIがない社内システムには届かない |
RPA | 画面(人の操作を模倣) | APIのないレガシーシステムの操作 | 画面変更で止まる。実行が遅い |
API直接連携(個別開発) | システムのAPI | 要件が固定された大量処理 | 開発・保守がエンジニア依存になる |
RPAは画面の見た目に依存するため、画面デザインの変更で止まります。iPaaSはAPIで内部的にデータをやりとりするため、画面変更の影響を受けにくく、処理も高速です。APIのある業務系SaaS同士の連携なら、iPaaSが第一候補になります。
なぜ今iPaaSか——AIを業務で動かす「制御平面」
生成AIの導入が進んでも、AIが業務プロセスの中で自動的に起動している企業は29.3%にとどまり、67.1%は人が手作業で起動しています。AIの出力側も同じで、成果物を手作業で作成している企業が46.2%、AIの出力を手作業でコピー・転記している企業が21.2%あります(Japan AI Operations Report 2026 Summer、n=548)。
AIに賢さが足りないから、ではありません。AIには業務データを読む場所と、結果を書き込む場所が与えられていないからです。人がプロンプトを打ち、出力をコピーして貼り付けている限り、AIは「人が呼び出す道具」のままです。
この「読む場所・書く場所・動くきっかけ」を与えるのがiPaaSです。役割分担は次のように固定できます。
担い手 | 担う役割 |
|---|---|
AI | 意味の理解、文章の生成 |
iPaaS | 起動、分岐、データ整形、通知、再実行、ログ、権限 |
人 | 判断、承認、例外対応、改善 |
AIが賢い頭脳だとすれば、iPaaSは神経と手足です。当社では、開拓営業の業務を6つの工程に分解し、この役割分担で自動化した結果、アポイント獲得数が約2倍、営業準備の工数が約7割減になりました(導入前後3ヶ月間の社内比較)。成果を出したのはAI単体ではなく、AIが働ける流れを作った設計の側です。
もう1つ、iPaaSが承認・権限・ログをフローに埋め込めることは、統制の基盤にもなります。未承認AI利用(シャドーAI)への対策としての意味はシャドーAIとはで扱っています。
MCPとの関係——接続の規格と、運用の制御平面
AIとツールの接続では、MCP(Model Context Protocol)というオープン標準の採用が広がっています。MCPは、AIアプリケーションを外部のデータソースやツールにつなぐための共通規格です。対応するツール同士なら、個別の開発なしにAIから読み書きできるようになります。
「MCPで接続できるなら、iPaaSは要らないのでは」という疑問が出ますが、両者は担う層が違います。MCPが標準化するのは接続そのもの、つまりAIがどのツールを読み書きできるかです。一方、いつ起動するか、どの条件で分岐するか、誰が承認するか、失敗したらどう再実行するかという業務フローの運用は、接続規格の外側にあります。iPaaSが担うのはこの運用の層です。AIが自分でツールに触れられるようになるほど、承認・ログ・権限といったフロー側の統制の重要性はむしろ上がります。
また、MakeのAI Agentsのように、iPaaS自体がAIエージェント機能を内蔵する動きも始まっています。接続はMCP、判断と生成はAI、フローの制御はiPaaSという役割分担で捉えると、位置づけを見失いません。
導入を考える順番
iPaaSはツール選定から入ると失敗します。つなぐ対象の業務が整理されていないと、動くフローが作れないからです。順番は次のとおりです。
業務フローを棚卸しする
AI・iPaaSがある前提で業務フローを再設計する
ツールとデータの状態を整える
入出力先と承認ルールを定義する
iPaaSで制御平面を作る
小さく運用し、標準化して横展開する
iPaaSの出番は5番目です。1〜4を飛ばしてツールを契約しても、自動化する対象が決まりません。再設計の具体的な進め方はAIエージェントとRevOpsで扱っています。
iPaaSが要らないケース
連携したいシステムが2つだけで、今後も増える見込みがなく、SaaS標準のネイティブ連携で要件が足りるなら、iPaaSは不要です。また、ミリ秒単位の応答が必要な基幹処理や、大量データの常時同期は、個別のAPI開発やETLツールの領分です。iPaaSの価値は、連携先が3つ以上に増え、分岐や整形を伴うフローを非エンジニアの手で作り変え続けたいときに出ます。
よくある質問
iPaaSは何と読みますか?
「アイパース」と読みます。Integration Platform as a Serviceの略です。
RPAとiPaaSはどちらを選ぶべきですか?
つなぎたいシステムにAPIがあるかで決まります。APIがあるSaaS同士ならiPaaS、APIのないレガシーシステムの画面操作を自動化したいならRPAです。両方が混在する業務では、併用も選択肢になります。
MCPとiPaaSはどう違いますか?
MCP(Model Context Protocol)はAIアプリケーションと外部ツール・データをつなぐ接続の標準規格で、iPaaSは業務フロー全体を組んで動かす制御平面です。MCPで接続したAIをいつ動かし、誰が承認し、どう記録するかはフロー側の設計であり、両者は競合ではなく補完の関係にあります。
料金はどう決まりますか?
多くの製品が、フローの実行回数または処理タスク数に応じた月額課金です。無料枠を持つ製品も多いため、1本のフローで小さく検証してから広げる進め方が取れます(各製品の現行料金は公式サイトで確認してください)。
次に確認すること
自社の業務で、人がAIを起動してコピー・転記している場面がどれだけあるかを数えてください。その数が、iPaaSで自動化できる候補の数です。diverは社外RevOpsチームとして、業務フローの再設計からiPaaSでの実装、運用定着までを一気通貫で担っています。自社の業務での組み方から相談したい場合は、diverへ相談するからどうぞ。
参照元
Japan AI Operations Report 2026 Summer(株式会社Mer、n=548、調査期間2026-06-24〜25、従業員100名以上の生成AI活用企業の責任者・担当者対象)
Model Context Protocol 公式サイト(modelcontextprotocol.io、2026-09-01確認)
Make「AI Agents」公式ページ(make.com/en/ai-agents、2026-09-01確認)
記事情報
著者: diver編集部
レビュー: diverチーム
更新日: 2026年9月1日